職場不適応症が増えている背景には、
サラリーマンをとりまく環境変化があります。
まず、サラリーマンに求められる能力が、
1990年代後半頃から大きな変化がありました。
企業側が求めているものが製造業を中心とした肉体的な労働力から、
情報や知識、サービスなど、ソフトを創造する、
より専門性の高い労働力ヘと変化してきました。
サラリーマンに、
高度な技術や直観力、独創性などが求められるようになりました。
反対に収益に直接結びつかないような
「他者への気配り」「滅私奉公」「補佐的な作業」などは
評価されない社会へと変貌してきました。
目 次
職場不適応症の出現は、IT革命(2000年頃)以降
ネット、PC、スマホの普及で、1990年代までに比べて
人間関係の希薄な社会になっています。
と同時に、個々のペースで仕事を進められるようになりました。
そのため要領よく成果さえ出せば、
職場に顔を出さなくてもすむ働き方が増えました。
自宅で仕事をすることを許されるサラリーマンもいる世の中です。
まじめにコツコツ頑張ることよりも、
成果を早く出す社員の評価が高いという時代です。
誠実な性格などは評価対象にならなくなっています。
そして、目に見える成果を上げられない社員は、
配置転換や退職をせざるを得ないこともあります。
実質的な退職を促されることも少なくありません。
日本経済新聞2005年5月1日付
1990年代の10年間で、
日本の職場は成果主義に傾き、
年功序列の給料や昇進システムは崩れました。
IT企業はその最たるものです。
そのため上司と部下、
あるいは同僚どうし協力しあう関係が築きにくくなりました。
また、上司は部下を大切に育てる余裕を失っています。
同僚は協力し、支え合う仲間ではなく、
ライバルとして対抗する間柄にもなっています。
こうした背景から、職場で追いつめられ、
能力を発揮できずに孤立する人も増えています。
IT革命(2000年頃)を境に労働環境は一変する
IT革命以前の職場
必要な能力
・製造業を中心とした労慟力
・職場を円滑にする「気配り」「根まわし」
・サポートカの高い作業・事務能力
重視されるもの
・残業・休日出勤をすすんでする姿勢
・上司の信頼を得る誠実で熱心な態度
・年功序列型の給与形態と昇進システム
IT革命以降の職場
必要な能力
・専門性の高い知識・技術力
・独創性や先見性
重視されるもの
・成果に直結する力
・職場の勤務時より手がけた職務内容
・成果主義による報酬と役職
このように
世知辛い、
ドライな、
人情味のない労働環境が
職場不適応症という疾患を生み出しました。
日本人には成果主義は適さないことがわかります。
これが成果主義の最大のデメリットです。
反対に成果主義の一番のメリットは
経営者は、利益追求を突き詰めることができることです。
職場不適応症の被害者を踏み台にして
得た富であることを経営者は認識すべきです。