生活や人生は、慎重であることは非常に大切です。
しかし、慎重で、心配の度が過ぎると
消極的、否定的、悲観的といった、
ネガティブな思考回路になってしまいます。
これは、育ちや持って生まれた性格からくるところがほとんどです。
うつ傾向やうつ病になる人の多くはこの性格です。
しかし、自分で意識して極度の消極的、否定的、悲観的な思考回路を
矯正することはできます。
ところで、どうして消極的、否定的、悲観的な思考回路に
なってしまうのでしょうか?
その原因を心理学で「認知の歪み」と呼ばれます。
これは物事のとらえ方を、
無意識に自分独自の間違った、
不必要な考え方(認知)をしているからです。
その、間違った、不必要な考え方を修正することで、
消極的、否定的、悲観的な思考回路から脱出できるのです。
今回は、脱出のポイントをご紹介します。
「認知の歪み」次の10パターンのどれかに当てはまります。
目 次
「認知の歪み」の10パターン
一般化のしすぎ
嫌なことがあると
「いつも失敗する」
「うまくいったことなんか全然無い」
「みんなから嫌われている」
などと思い込んでしまう思考。
これを「一般化のしすぎ」という。
こういうクセがあると、
嫌なことが、
延々と続いているように錯覚し、
何をやるにも後ろ向きになり、
うつ状態になる。
オール・オア・ナッシング思考
物事を「白か黒か」「0か100か」
両極端な考え方。
その中間がなく、二者択一的思考。
これを「オール・オア・ナッシング思考」
という。
このような思考のクセがあると、
日常生活のささいな失敗で
「もう全部がダメだ」と考えたり、
ちょっとうまくいくと、
「オレは天才だ」と思ったりする。
心のフィルター
1つのネガティブな要素(消極的、否定的、悲観的)
にこだわってくよくよする。
例えば、
あることを
100人中、99人は賛成、賞賛してくれているのに、
たった1人が反対意見を言っただけで、
その1人にとらわれてしまい落ち込む。
99人をフィルターにかけて無視し、
その1人だけにとらわれる精神状態。
マイナス化思考
良いことでも、
何でもないような普通のことでも、
悪いふうにとらえて解釈する。
例えば、仕事でいい成績を残せても
「こんなのは偶然だ」と思って自分を評価できず、
成績が悪いと「やはり自分はダメなんだ」と
自己を低く評価する。
すべき思考
文字通り、「~すべき」とか「~でなくてはならない」
「~すべきではない」とする考え方。
こういうクセのある人は
「常識だと~でしょう」とか
「普通なら~すべきだ」
というような表現を使いがち。
この「すべき思考」は、
人と対立が生まれやすい。
拡大解釈と過小評価
自分の短所や失敗を必要以上に大きく意識して、
自分の長所や成果についてはたいしたことがないと
低く考えるクセ。
例えば、頑張って大学に入ったのに、
こんな大学、誰でも合格できる、
たいしたことではない、
などと考えるのは、まさにこのクセ。
自己中心的思考
何か嫌なことがあると、
それが自分に関係ない事柄であっても
「いけないのは自分だ」と感じて、
何でもかんでも自分のせいにしてしまう
考え方のクセ。
例えば、グループで仕事をやっていて、
社員同士が仕事とは関係のないことが原因で
仲たがいをしているのに
「自分のせいだ」と考えるなど。
結論の飛躍
根拠もないのに悲観的な結論を出す。
これには「心の読み過ぎ」と「先読みの誤り」
の2つがある。
「心の読み過ぎ」は、本当かどうか確認せずに、
誰かが自分のことを悪く考えていると勝手に決めつける。
例えば、異性にメイールを送ったところ、返事がこない場合、
「嫌われている」と確信する。
また、「先読みの誤り」は、今の状態が確実に悪化すると
決め付けるようなクセのこと。
例えば「もうこの病気は治らない」などと思う。
感情的決め付け
自分の感情を根拠にして、出来事や事実を決め付ける。
「ダメなものはダメ、嫌なものは嫌」など。
怒りや不安が募っている精神状態のときに、
この強硬な考え方におちいりやすい。
レッテル貼り
「一般化のしすぎ」や「心のフィルター」が
強まった精神構造。
ちょっとした失敗でも、
自分は「ダメ人間」「自分は異性にモテない」「バカ」などと
自分で自分に非常にネガティブなレッテルを貼る。
自分で自分を追い込んでいき、
ますますつらくなっていく。
年を追うごとに、自身にまったく自信がなくなり、
思考停止すらおこる。
ではなぜ「認知の歪み」は起こるのか?
「認知の歪み」の根底には、
スキーマ(固定観念)が存在するとされています。
このスキーマとは
今まで生きてきた経験から形成されます。
”考え方のクセ”といえます。
スキーマがもとで、
「自然と浮かんでくる考え」(自動思考)を生み出します。
仕事一筋、会社第一の父親を見て育った男性がいたとします。
この男性は
「辛くても、進んで残業も休日出勤もをして、
会社に献身的に働き続けなくてはならない、
今の会社あっての自分の人生」
というスキーマがあります。
このスキーマのせいで、
休日にのんびり休んだり、
楽しいことをしているのに、
「こんなことをしていてはダメな俺だ」
という考えが浮かんできてしまうのです。
こういったマイナスなスキーマ(固定観念)によって
「認知の歪み」が起きます。
「認知の歪み」は、
強いストレスにさらされた時に
さらに強く表れる傾向にあります。
「認知の歪み」は、
ネガティブ思考(消極的、否定的、悲観的)で
心の中がいっぱいになってしまいます。
するとさらにストレスが激烈になります。
そうなるとうつ状態(うつ病)になってしまいます。
「認知の歪み」を矯正する方法
「認知の歪み」を矯正する方法を
「認知療法」といいます。
“療”という漢字が使われている通り、
「認知の歪み」は心の病です。
歪んでしまっている感性を、
正常なものに直すことができれば、
今までにない気付きを得られたり、
少し心が楽になります。
次に「認知療法」の具体的な方法を紹介します。
「認知療法」の方法
1 【状況】 |
「自分にとって嫌なこと」が生じた状況について、 「いつ、どこで、誰が、何を」の4点を具体的に紙に書き出します。 |
2 【自動思考】 |
「自分にとって嫌なこと」が生じた時に、すぐにどう思ったか、 どう感じたのかを自分の言葉で紙に書き出します。 |
3 【認知のゆがみ】 |
前で「認知の歪み」の10パターンのどれに当てはまるかを 紙に書き出します。 なお、1パータンだけでなく、複数のパターンに当てはまるケースが ほとんどです。 |
4 【合理的反応】 |
「考え方のクセ」によって消極的、否定的、悲観的に 偏ってしまった考え方を 客観的に合理的に感じ直して、 正しい認知に矯正し、紙に書きだします。 |
このように具体的に紙に書き出すことが重要です。
頭で考えるだけではダメです。
ワープロで書いて、整理することでも効果があります。
自分で自分の「考え方のクセ」を発見することが
「認知療法」の方法です。