日本では、誰もが幼少期に
アニメに触れ、夢中になるのがほとんどだ。
しかし、テレビアニメ視聴が子供たちの「通過儀礼」として終わらずに
10代前半~20代へと年齢を重ねても継続してのめり込んでいる状態を
「アニオタ」 (アニメオタク・アニメ愛好家)と称される。
つまり中学生、高校生ぐらいからオタク化が始まる。
アニオタの出現は1970年代の
『宇宙戦艦ヤマト』『アルプスの少女ハイジ』の
テレビ放映された時にのめり込んだ10代、20代の人が
アニオタの原点と考えられる。
目 次
アニメオタクの発端は70年代の『宇宙戦艦ヤマト』から
『宇宙戦艦ヤマト』は、
1974年10月6日~1975年3月30日まで全26回、
日本テレビで放映された。
初回放送は視聴率が低く失敗アニメとされた。
翌年1975年9月から札幌地域、
1976年1月から日本テレビで再放送された。
さらに各地域で続々と再放送が行われるにつれ、
『宇宙戦艦ヤマト』が再評価されるようになってきた。
特に関東地域では
再放送で20%の視聴率を記録した回があり、
この再放送や映画化により社会現象となる
歴史的大ブームを巻き起こした。
これは“ヤマトブーム”のみならず、
後のアニメブーム、
そしてアニメ史上でさまざまな影響をもたらした。
『宇宙戦艦ヤマト』は
それまでの男の子を対象にしたアニメとは異なり、
SF的設定やヒロインの森雪(もりゆき)、
主人公の古代進(こだいすすむ)とのロマンスなど
大人も楽しめる初めてのアニメであり、
多くのファンを獲得した。
後の『機動戦士ガンダム』を代表とする
SF系作品群の先駆である。
1979年4月7日~1980年1月26日まで
テレビ朝日『機動戦士ガンダム』
(土曜日 17:30~18:00)が放映された。
『宇宙戦艦ヤマト』の記憶に新しい中、
初回放送は低視聴率で終了しており、
一ロボットアニメにすぎない位置づけであった。
その後、ヤマトと同様、再放送や映画化で社会現象となる
歴史的アニメとなった。
同時に、ガンダムに登場するメカロボットの
プラモデル(通称ガンプラ)も多く発売され
一大ブームとなった。
ガンプラは当時10代~20代の男子を中心とする
アニオタの拡大に大きく影響した。
『機動戦士ガンダム』により、
アニオタの存在は社会的に確立した。
一方『アルプスの少女ハイジ』は
ヤマト、ガンダムとは違う源流となった。
『アルプスの少女ハイジ』は、
フジテレビの日曜夜7時30枠で1974年1月6日〜12月29日まで
全52話が放送された。
また5年後の1979年3月17日から、
ダイジェスト版が劇場映画として
公開されている。
フジテレビの長寿番組となった
世界名作劇場の第1作となる
『アルプスの少女ハイジ』は、
少年少女向けに
名作の精神を伝えていく
アニメであった。
このように、ハイジはヤマトとガンダムと
まったく異なる性格の違うアニメであった。
特に、関東圏の初回放送時は
ヤマトとハイジは同時間だったため、
子供たちはどちらの作品を見たかで、
その後のアニメに対する方向性が異なっていった。
ヤマトは男子系家庭で、
ハイジは女子系家庭で視聴されたのだが、
初回放送では、ヤマトはハイジに
視聴率的に完敗している。
ヤマト派はガンダムを代表とするSFロボットアニメへと進み、
ハイジ派はハートフルな作品にはまっていったものと考えられる。
なお『アルプスの少女ハイジ』は、
場面設定・画面構成は宮崎駿
演出は高畑勲が担当している。
ハートフルな作品の代表的位置づけは
宮崎アニメ、後のジブリアニメへとつながる。
『未来少年コナン』(宮崎アニメ)は
1978年4月4日~10月31日にかけて、
毎週火曜7時30分~8時に
NHKで初めて放送されたアニメだ。
翌年1979年12月15日公開の宮崎駿の映画初監督作品
『ルパン三世 カリオストロの城』へと続いた。
アニオタの80年代
1981年10月14日~1986年3月19日まで、
水曜19:30~20:00枠の
フジテレビ『うる星やつら』が放映された。
さらに翌年1982年
『魔法のプリンセス ミンキーモモ』が人気になった。
また、世界的に評価が高い宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』は
1984年に公開され、アニオタだけでなく、
幅広い層の人たちに感動と衝撃を与えた。
『風の谷のナウシカ』は新たなアニメファンの獲得へ結びつき
歴史的な作品となった。
この頃にアニオタという存在が
社会的に知られるようになり、
いよいよ日本アニメ文化の本格的台頭の時代へと
突き進むこととなる。
80年代は、「ヤマト、ガンダム」系、
「ハイジ」系とはこまったく異なる
「魔法少女」系分野が確立された。
この先駆けが「ミンキーモモ」「クリィミーマミ」である。
『魔法のプリンセス ミンキーモモ』
1982年『魔法のプリンセス ミンキーモモ』
(テレビシリーズ・第1作)全63話
1985年『魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢の中の輪舞』(ビデオ)
1991年『魔法のプリンセス ミンキーモモ 夢を抱きしめて』
(テレビシリーズ・第2作)全62話
1993年『MINKY MOMO IN 夢にかける橋』(ビデオ)
1994年『MINKY MOMO IN 旅だちの駅』(ビデオ)
『魔法の天使クリィミーマミ』
クリィミーマミは1983年7月1日~1984年6月29日まで、
日本テレビで全52話が放映された。
テレビシリーズ終了後、VHSビデオで4点発売された。
1984年『魔法の天使クリィミーマミ 永遠のワンスモア』
TVシリーズの総集編+続編
1985年『魔法の天使クリィミーマミ ラブリーセレナーデ』
ミュージッククリップ
1985年『魔法の天使クリィミーマミ ロング・グッドバイ』
シリーズ完結編
1986年『クリィミーマミ ソングスペシャル2 カーテンコール』
ミュージッククリップ
『キャプテン翼』
『週刊少年ジャンプ』で
1981年18号~1988年22号まで
『キャプテン翼』が連載された。
1983年から『キャプテン翼』が
テレビ東京で放映された。
『キャプテン翼』当時テレビ東京開局以来のヒットと称され
最高視聴率21.2%を記録している。
『キャプテン翼』は日本国内にサッカーブームを巻き起こし、
Jリーグ創設の機運をつくった決定的なアニメである。
また、世界50か国以上でテレビ放送され
世界的なサッカーアニメである。
なお、 キャプテン翼』は『週刊少年ジャンプ 』で
1981年18号~1988年22号まで連載されていた。
アニオタの90年代
1992年~1997年にテレビ朝日で
『美少女戦士セーラームーン』
5シリーズ全200話が放映され、
劇場版も複数公開された。
少年少女だけでなく、
20代~30代の男性アニメオタクからも
絶大な人気をはくした。
セーラームーンはタイプの違う少女たちが
正義のために戦うという内容。
この主人公たちのそれぞれのファンとなった層が、
後の“萌え系アニオタ”の源流と位置付けられている。
90年代半ば、1995年10月4日~1996年3月27日に
テレビ東京『新世紀エヴァンゲリオン』
(水曜日18:30~19:00)
が放映された。
リアルで詳細なSF的設定がなされた
メカロボット系アニメである。
登場人物の1人である
「綾波(あやなみ)レイ」に代表されるような
魅力的なキャラクターをミックスした作品であった。
特に男性アニオタをひきつけた。
『新世紀エヴァンゲリオン』はテレビ放映後、
VHS、DVD、Blu-rayで多くの作品を世に送り出した。
『新世紀エヴァンゲリオン』も『美少女戦士セーラームーン』同様に、
一時期社会現象といわれるほどの人気となった。
近年では「新世紀エヴァンゲリオンBlu-ray BOX」
NEON GENESIS EVANGELION Blu-ray BOX
(2015年8月26日 発売)と20年間にわたって進行した
壮大なアニメ作品であった。
テレビ放送からは離れた作品発信となったため
知らない人はまったく知らない、
まさにアニオタの世界を構築した
大アニメワールドであった。
アニオタの2000年代
『機動戦士ガンダム』の新シリーズである
『機動戦士ガンダムSEED』全50話が
2002年10月5日~2003年9月27日(土曜日18:00~18:30)に
放映された。
10代~30代を中心にして、ガンダムが再ブレイクした。
また『週刊少年ジャンプ』で
1999年32号~2008年14号まで連載されていた
『テニスの王子様』。
テレビ東京で『テニスの王子様』が
2001年10月10日~2005年3月30日にかけて
水曜19時~19時27分枠で放映された。
これは80年代の『キャプテン翼』のときと同様
アニオタを大いに刺激した。
まとめ
以上、1970年代末期~2000年中期までの
アニオタの概要をまとめた。
当然、諸説あり確定的なものでは一切ない。
完全に私心に基づいたものである。
2000年代中期以降については
現在進行している現象でもあるので、
周知の通りであり割愛した。
1970年代の
『宇宙戦艦ヤマト』や『アルプスの少女ハイジ』を
10代で視聴した年代が
アニオタ層の中心と考えられる。
『宇宙戦艦ヤマト』
『アルプスの少女ハイジ』以外、
1970年代には数多くのアニメが放映されているが
アニオタを出現させる
ということはなかった。
つまり、この2作品がアニオタの ビッグバン
であったことは間違いない。
1970年代の『宇宙戦艦ヤマト』現象以来、
時代時代でアニオタを刺激する
歴史的なアニメ作品が登場している。
そのたびにアニオタは増え続けている。
80年代に20代だったアニオタは、
50代~60代になっている。
その年代になってもアニオタを続けている人は
多く存在すると推察できる。
10代~60代まで
アニオタが存在していることになる。
アニオタは知識欲、収集欲が非常に強い。
また、ハードディスクレコーダーや
PCを駆使して
TVアニメの録画、編集すら行うアニオタもいる。
現在のアニオタは
80年代、90年代のアニオタよりも
活動が膨大、かつ飛躍的に多角化している。
今や、アニオタは若者だけの人生観、文化ではなく
中高年層にも及ぶ現代日本文化なのだ。